MINISFORUM N5 の構成を検討(ハードウェア編)

MINISFORUM N5 の構成を検討(ハードウェア編)

前回、MINISFORUM N5 無印の紹介と購入についての記事を書きましたが、やはり N5 無印の魅力は拡張性と豊富なインターフェイスです。

  • 小型のフォームファクタ
  • パワフルな Ryzen 7 255 プロセッサ
  • 交換可能な 5つの 3.5 HDD ベイと、3つの M.2 NVMe スロット
  • 10GbE と 5GbE ネットワーク
  • OCuLink と PCIe x16 スロット(接続はどちらも PCIe 4.0 x4)

ただの NAS ではなく、VM(仮想マシン)や Docker コンテナをホストするホームサーバーとしての運用を考えていますが、豊富な拡張性を活かして色々な使い方ができると思います。

N5 無印が届くのはまだ少し先なのですが、豊富な拡張性を活かした構成などを考えてみたいと思います。商品が届くまでの間に、あれこれ構成を考えるのって楽しいものです。実際にやるかどうかは別として…。

ストレージについて

何はなくとも、NAS ですからストレージが選びから。

3.5 インチ HDD

5スロットあるので大容量のディスクで埋めてもいいし、RAID 構成も用途にあわせた選択ができます。個人的には5スロットあれば、まともな RAID5 が組めるのは大きなポイントです。

5本のディスクで RAID 5 を組んだ場合には 2台のディスクの故障まで対応できますが、4本で RAID5 を構成した場合には1台の故障までにしか対応できません。
海外のフォーラムで N5 の 3.5インチベイが 5スロットは「中途半端」という意見を見かけましたが、RAID で考えると 5台以上から得られるメリットがしっかりあるのです。

やはり NAS 向けのハードディスクを選びたいところ。予算が潤沢にあれば公式スペック上の上限である 22TBのディスクを入れたいところですが、現在コストパフォーマンス(TB あたりの単価)が良いのは 16TB〜20TB ぐらいのディスクです。

静音性、信頼性、好み(や過去の恨み)などみなさん個人的なこだわりがあると思いますが、SEAGATE なら IronWolf PRO シリーズWestern Digital なら WD Red Pro シリーズ、個人的に好きな TOSHIBA なら  N300 シリーズMG シリーズから選ぶ感じになるかと思います。

とりあえず、私は現在 RAID-Z1 で使っている TOSHIBA MG08ACA16TE 2台をそのまま持ってきて、必要になったら拡張していく予定です。

M.2 NVMe と U.2 SSD

N5シリーズM.2 スロットは 3スロットあり、そのうち1つは Miniscloud OS がプリインストールされた 64GB の M.2 eMMC(2230)で埋まってます。

Miniscloud OS 用のドライブは、取り外してよりパフォーマンスの良い M.2 NVMe SSD に交換できます。

3つの NVMe スロット(出典: NASCompares

付属の 64GB eMMC(出典: NASCompares

この3つの NVMe スロットの仕様がとてもわかりづらいので表にしてみました。

  レーン数 スロット スループット 補足
M.2(2280/22110) PCIe 4.0 x2  1つ 4GB/s ストレージ用 / U.2 排他利用
M.2(2280/22110) PCIe 4.0 x1 1つ 2GB/s  ストレージ用 / U.2 排他利用
M.2(2230/2280/22110) PCIe 4.0 x1 1つ 2GB/s  Miniscloud OS 用 eMMC 64GB SSD

どうしてこうなった...と言いたくなるレーン構成ですが、PCIe レーンをめいいっぱい使うぞ!という MINISFORUM の気概を感じなくもありません。

残念ながら PCIe 4.0 x4 のパフォーマンスをフルに発揮できるスロットはありません。現在の主流の NVMe SSD は PCIe 3.0 と、PCIe 4.0 ですが N5 シリーズは M.2 に割り当てられたレーン数が少ないので PCIe 4.0 を必須として、用途に合わせて容量で選ぶことになります。

PCIe は基本的に下位互換があるので、PCIe 4.0 の M.2 スロットで PCIe 3.0 の NVMe SSD を使うことは可能ですが、その速度は PCIe 3.0 に制限されてしまいます。

例えば N5 シリーズの PCIe 4.0 x2 の M.2 スロットに PCIe 3.0 x4 の NVMe SSD をつけた場合のスループットは PCIe 3.0 x2 の速度で 2GB/s。一方、PCIe 4.0 x4 の NVMe SSD ならスループットは PCIe 4.0 x2 の 4GB/s になります。

新しく買うなら、PCIe 4.0 対応の NVMe SSD を選んでおきましょう

定番の KIOXIA の PCIe 4.0x4 の NVMe SSD から。個人的に KIOXIA は発熱控えめのイメージもあり、コストパフォーマンスも良いので結構好きです。

Western Digital の Blue シリーズも発熱少ないらしくよさそうです。KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 は 2TB モデルまでですが、WD Blue は 4TB モデルもあります

なお、Western Digital は NAS 向け NVMe として WD Red シリーズも出していますが、現在 PCIe 3.0 なのでお勧めしません

最後に U.2 についても触れておきます。

N5 シリーズは付属のライザーカードをかますことで U.2 SSD に対応できます。ライザーカードは 3つの M.2 スロットに接続する形になり、3つのスロットライザーカード上に移動するようです

N5 Pro マザーボードの M.2 スロット(出典: NASCompares

付属の U.2 ライザーカード(出典: NASCompares

ライザーカードを刺した状態では、各スロットの仕様は以下のようになると思われます。実機が来ないと確実なことは言えませんが…。

  レーン数 スロット スループット 補足
U.2 PCIe 4.0 x2  1つ 4GB/s ストレージ用 / M.2 排他
U.2 PCIe 4.0 x1 1つ 2GB/s  ストレージ用 / M.2 排他
M.2(2230/2280) PCIe 4.0 x1 1つ 2GB/s  ストレージ用 / 2210 が使えなくなる

U.2 SSD は完全にエンタープライズ向けでそこらへんで売ってないし、売っていても高価なので U.2 SSD ドライブを探すのはやめました

メモリーについて

N5 シリーズ公式にサポートする最大メモリは 96GB なので、48GB の2枚セット買ってしまうのが良さそうです。

N5 無印に搭載の Ryzen 7 255 は、スペックシート上は 256GB までサポートしています。MINISFORUM のサポート対象外になりますが 64GB 2枚で 128GB とか、128GB 2枚で 256GB といった構成を試す猛者も出てくるかもしれません。128GB のメモリモジュール見たことないけど...。 

私は、ケチって 64GB のメモリ1枚にしてみようかなと思っています。おそらく MINISFORUM のサポート対象になるのは 1スロット 48GB までだと思われるのでリスクはあります。まぁたぶんイケるだろうと踏んでます。

1枚ではデュアルチャネルを活かせないですが、32GB 2枚より安いしなにより将来的には1枚買い足しすれば無駄なく 128GB に出来るのが嬉しい。動作確認ができたらお知らせします。

PCIe x16 スロットの使い方

N5 シリーズ最大の特徴である PCIe x16 スロットですが、これをどう活用するかは人によって大きく異なるところで面白いところだと思います。

どんなユースケースが考えられ、実際にどんな PCIe カードが使えそうそうかを考えてみます。まずは、N5 シリーズの PCIe x16 スロットの仕様のおさらいです。

PCIe 世代 PCI-Express 4.0(Gen4)
PCIe レーン数 PCIe x4
PCIe ソケット形状 PCIe x16
搭載可能なカードの厚さ シングルスロット
搭載可能なカードの高さ ロープロファイル
搭載可能なカードの長さ 不明

まず注意しないといけないのがスロットの物理的な形は PCIe x16 ですが、接続されている PCIe レーン数は PCIe x4 になります。

そして、小型のフォームファクタなので、さすがにフルハイト、デュアルスロット以上が当たり前の GPU の搭載はできません。まぁ GPU 使いたいなら OCuLink で外部接続にするべきでしょう。

シングルスロットで、ロープロファイルとなると搭載できるカードは限られてきます

この先で色々「こんな PCIe カードの活用方法があるかも」といいう視点で様々な PCIe カードを取り上げますがN5 シリーズ使えるのか、そもそも筐体に収まるのかなどについて、一切保証出来ませんのでご注意ください。

ネットワークカード

まず考えられるのが、ネットワークカードの追加です。N5 シリーズ には RJ45コネクタの 10GbE と 5GbE ポートが1つずつありますが、10GbE ポートが2つ必要というニーズは多そうです。

COMPUTEX TAIPEI 2025 に展示されていた N5 Pro にも RJ45コネクタの 10GbE カードが追加されていたようです。

N5 シリーズの PCIe スロットは x4 レーンなので、10GbE を2つだと帯域が足りません1ポートのモデルを選ぶことになります。ネットワークカードにはあまり詳しくありませんが、RJ45コネクタの 10GbE だと、Intel X550 搭載したモデルあたりになるんでしょうか。

PCIe Gen3 x4 で、形状は PCIe x8 になっていて使い勝手が良さそうです。

また、10GbE の SFP+ ポートが欲しい場合は Intel 82599 搭載カードで対応できます。こちらも帯域の都合上 1ポートモデルになります。

PCIe Gen2 x4 で、形状は PCIe x8 になっているのは RJ45 のモデルと同じ。

なんとなく Intel チップのものを探してみましたが、Mellanox ConnectX-3 / ConnectX-3 Pro あたりのチップ搭載モデルも手に入るなら良さそうです。

グラフィックボード

ロープロファイルのシングルスロットなので、ゲームなどのための最新 GPU カードを納めようというのはムリな話ですが、GPU の使い道はなにもゲームパフォーマンスやディスプレイ出力に限りません

N5 シリーズメディアサーバーとして使う場合には、ビデオのエンコードトランスコーディングの用にコンパクトな GPU ボードを利用することができます。

Intel ARC A310 は、2022年のチップですがメディアサーバーのトランスエンコーディングや、ビデオエンコーディング十分なパフォーマンスを発揮してくれます。Plex で利用した場合 4K H265(HEVC)を 720p へ変換するトランスコーディングを難なくこなせるそうです。

価格もお手頃なので、こういう使い方もアリですね。

Wi-Fi + Bluetooth PCIe アダプター

N5 シリーズには Wi-Fi も Bluetooth もありません。NAS だし、RJ45 の 10GbE や 5GbE ポートがあるのでネットワークは有線でということだと思いますが、設置場所などの都合で Wi-Fi が必要という需要はありそうです。

N5 Pro には Wi-Fi / Bluetoothモジュール用の M.2 Key E スロットがあるような記述もどこかで見かけましたが、公式のスペック表に記載がなく、先行レビューなどの写真を見た限りでもM.2 Key E スロットは無さそうです。

どうせなら、Wi-Fi 7 対応にしたいところ。

ちゃんと調べていませんが Intel BE20X は AMD 製の CPU との相性やパフォーマンスに問題があるそうなので、評判が良い MediaTek MT7927 搭載モデルが良さそうです。

Wi-Fi 7 と Bluetooth 5.4 に対応で、2882Mbps(6GHz)+ 2882Mbps(5GHz)+ 688Mbps(2.4GHz)に対応。 

アンテナが外出しの別接続になっているバージョンもあり、Wi-Fi 7 をさらに活かした 5760Mbps(6GHz)+ 2880Mbps(5GHz)+ 688Mbps(2.4GHz)に対応。Wi-Fi 7 の 6GHz 帯をしっかり活用するには、アンテナも厳つくなるんですね…。

両モデルとも TP-Link が国内販売しているモデルなので、正規代理店から買えば技適の心配もありません

PCIe to M.2 NVMe アダプタ

オンボードの M.2 NVMe スロットは最大でも PCIe 4.0 x2 スロットしかないので、PCIe 4.0 x4 接続の高速な M.2 NVMe が必要な場合には、M.2 NVMe to PCIe アダプターが選択肢になります。

速度よりも NVMe の数を増やしたい場合には、2つの M.2 NVMe スロットを持ったカードもあります。この場合 2つの M.2 NVMe スロットの速度は PCIe 4.0 x2 になります。

このアダプタカードは ASM2812(PCIe 分岐を行うチップ)がオンボードにあるので、N5 シリーズでもたぶん使えますたぶん

TVチューナーカード

チューナーカードを追加して、テレビ録画サーバーとして使うというのも面白いかもしれません。録画環境として PCIe カードが収まる NAS ボックスを待望していた人には N5 シリーズは魅力的だと思います。

N5 シリーズは公式に Windows 11 Pro に対応しているので Windows インストールできるなら!という人も安心?です。私のような Linux ユーザーだと DTV は色々とは敷居が高そうですけど。

OCuLink ポート

N5 シリーズには、みんな大好き OCuLink コネクタがあります。OCulink は、PCIe を外部デバイスと接続するためのインターフェース規格で、元々はサーバー向けの規格です。

N5 シリーズの OCuLink コネクタの仕様は以下の通り。

OCuLink ポート 1ポート
PCIe 世代 PCI-Express 4.0(Gen4)
PCIe レーン数 PCIe x4

内部の PCIe スロットと同じです。大きく異なるのは、OCuLink ドックに接続して使うものなので物理的なサイズの制限を受けません

もちろん内部接続は PCIe x4 に制限されますが、フルハイト・デュアルスロット以上の GPU なども接続可能です。そういう意味ではなんでもありなので、ここでは深掘りしません。

個人的には N5 無印が初めての OCuLink 搭載 PC なんですが、OCulink ドックってなんで剥き出しのばかりなんでしょうか。冷却機構をもった BOX タイプのものがあれば使ってみたいなと思っています。

Previous

MINISFORUM N5 をオーダーしたので他の NAS と比較

Related