AOOSTAR の NAS 向けミニPCの新モデルについて
以前、NAS 向け Ryzen 5 5500U 搭載ミニPC 購入 で AOOSTAR(と SkyBarium)製の NAS のレビューを書きましたが、AMD Ryzen 7 5700U(Lucienne) と Intel Processor N100(Alder Lake)を搭載したモデルが登場していることに気がつきました。
AMD Ryzen 5 5500U モデルのレビューを書いてから(私が知ってから)半年足らずですが、マイナーチェンジやバリエーションモデルが出るのが早いですね。
こういったフットワークの軽さは中華系メーカの強みだと思います。
Intel モデルと AMD Ryzen モデルの仕様の違い
新モデルには AMD Ryzen 7 5700U と Intel Processor N100 モデルがあり、仕様にはだいぶ違いがあります。
2023年発売で世代が新しい Intel Processor N100 が手放しに良いかというと、そうでもありません。
Ryzen 5700U モデル | Intel N100 モデル | |
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CPU(発売時期) | AMD Ryzen 7 5700U(2021年1月) | Intel N100(2023年8月) |
CPUコア数 | 8コア・16スレッド | 4コア・4スレッド |
周波数 | 1.8 GHz 〜 4.3 GHz | 1.8 GHz 〜 3.2 GHz |
メモリ | 2 × DDR4-3200(最大 64GB) デュアルチャネル |
1 × DDR4-3200(最大 32GB) シングルチャネル |
M.2 NVMe | 2スロット(PCIe 3.0 × 4 接続) | 1スロット(PCIe 3.0 × 2 接続) |
SATA HDD/SSD | 2スロット(最大 20TB × 2) | 2スロット(最大 20TB × 2) |
有線 LAN | 2 × 2.5GbE | 2 × 2.5GbE |
無線 LAN | WiFi 6(802.11ax) | WiFi 6(802.11ax) |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 | Bluetooth 5.2 |
インターフェイス |
1 × USB3.2 Gen 2(Type-C)*1 2 × USB3.2 Gen 2(Type-A) 2 × USB2.0 1 × DP1.4(4K/144Hz) 1 × 3.5mm Audio Jack 1 × HDMI 2.1 |
1 × USB3.2 Gen2(Type-C)*1 2 × USB3.2 Gen1(Type-A)*2 2 × USB2.0 1 × DP1.4(4K/144Hz) 1 × 3.5mm Audio Jack 1 × HDMI 2.1 *1 |
特に目立つのはメモリの仕様と M.2 NVMe SSD の仕様の差です。
Intel N100 のメモリはシングルチャネルで1枚のみ 32GBまで、さらに M.2 NVMe スロットも1つだけで PCI Express 3.0 × 2 接続となっています。
これは Intel N100 の仕様と PCI-Express レーン数による制限からくるものと思われます。
単純にレーン数だけの問題ではなく Intel N100 の仕様も関係するのでしょうがないんですが、M.2 NVMe SSD スロットが1つで PCI Express 3.0 × 2 接続(最大速度は x4 の半分の1.97GB/s)というのは用途によっては大きな影響があります。
Ryzen 5700U モデルと同じ M.2 NVMe SSD スロット2つ、2.5GbE のポート2つ(I226-V × 2)に必要なPCI-Express 接続レーン数を単純に数えると10本必要になります。
- M.2 NVMe SSD スロットには PCI Express 3.0 × 4本が必要で、2つ搭載するには合計8本必要
- 2.5GbE(Intel I226-V)には PCI Express 3.0 ×1 が必要で、2つ搭載するには合計2本必要
Ryzen 5700U には PCI Express 3.0 レーンが12本ありますが、 Intel N100 は PCI Express 3.0 レーンが9本なので単純計算でもレーン数が足りないことになります。
Intel モデルと AMD Ryzen モデルのパフォーマンスの違い
単純に処理速度で見れば CPUコア数、スレッド数、最大クロック周波数が勝る Ryzen 5700U モデルの方が速いです。
CPU として AMD Ryzen 7 5700U と Intel Processor N100 を比較してみると以下のようになります。
新モデル同士を Geekbench 6 のベンチマークスコアで比較すると、Ryzen 5700U は N100 に比べてシングルコアで 8%高速、マルチコアでは 109% も高速です。
一方 NAS やルーター用途で考えると Intel N100 の TDP は 6W は大きな魅力です。Ryzen 5700U の デフォルト TDP は 15W あるので、静音性や消費電力で考えると Intel N100 モデルにアドバンテージがあります。
ちなみに旧モデル Ryzen 5 5500U と新モデルの Ryzen 7 5700U の CPU はどちらも Zen2 アーキテクチャで、CPU の発売時期も同じです。
単純に Ryzen 5700U が上位モデルと思ってよく、Geekbench 6 のベンチマークスコアで Ryzen 5500U と比べてシングルコアで 10%、マルチコアで 21% 高速です。
まとめ
そんなわけで、スペック重視の Ryzen 5700U、静音性や消費電力で考えると Intel N100 ということになるかと思います。
個人的には、ストレージを沢山積んでさまざまなタスクを処理させたいなら Ryzen 5700U モデルを推します。サブのデスクトップPCや、私のように NAS + VM のハイパーバイザーとしても使いたいといった用途ですね。
逆に、シンプルな NAS やルーターとして使いたいなら Intel N100 モデルじゃないでしょうか。
どういった用途に使いたいかで選択肢があるラインナップはなかなか良いと思います。構成要素で悩むのも楽しみのひとつですからね。
ちなみに、AOOSTAR は NAS 向けの製品として AOOSTAR WTR R7 PRO という製品を準備中のようです。
- AMD Ryzen 7000 シリーズ CPU
- 6台の 3.5インチ HDD ベイ
- 6枚の M.2 NVMe スロット
- 10GbE と2つの 2.5GbE 有線LAN ポート
この構成はかなり気になります。今は掲載されていませんが、3.5インチベイが 4台のモデルも計画されているようです。
値段次第ですが、機会があればぜひ触ってみたいものです。
AMD Ryzen 7 5700U 搭載モデル(メモリ16GB、NVMe M.2 SSD 512GB) は 10,000円 OFF クーポンで実質 47,700円、Intel N100 搭載モデル(メモリ16GB、NVMe M.2 SSD 512GB) は 6,000円 OFF クーポンで実質 33,900円でした。
Intel N100 搭載モデルにはベアボーンモデルもあり 29,900円に 3,000円 OFF クーポンで実質 26,900円です。※ どちらも2024年1月末時点
今回紹介している出品者は AOOSTAR直営店というアカウントですが、 AOOSTAR-JP というアカウントも同じ(と思われる)商品を出品しています。どちらのストアが良いかはわかりませんが、定価やクーポンによる割引に違いがあり、タイムセールもやっているようなのでその時にお得なストアから買うのが良さそうです。
AOOSTAR のオフィシャルページでは各モデルを以下のように表記していました。
これが正式名称のようです。旧モデルの名前は WTR R3 5500U Mini PC だったのかもしれません。WTR N1 Pro と呼んでましたが、まぁどっちでもいいか...。