MINISFORUM N5 をオーダーしたので他の NAS と比較

少し前から話題になっていた MINISFORUM の NAS、N5 Pro AI NAS と N5 AI NAS がついに発売になりました。
さんざんっぱら熟考して、N5 AI NAS(以下、N5 無印)をオーダーしました。私のオーダーの出荷は8月末だそうです。だいぶ先ですけど楽しみですね。
以前記事にした AOOSTAR の NAS mini PC の置き換えとなる予定で、TrueNAS Scale をインストールて運用するつもりです。
MINISFORUM N5 Pro と N5 無印の違い
N5 Pro は CPU に AMD Ryzen AI 9 HX PRO 370 を搭載し、N5 無印は AMD Ryzen 7 255 を搭載。
事前情報では N5 無印の詳細はあまり確認できず、拡張性や LAN 周りが制限されるだろうと思っていたのですが、発表されてみれば異なるのは CPU と ECC メモリへの対応だけでした。
両モデル共通の特徴をざっとあげると以下の通り。
- 3.5 インチ HDDベイ x 5
- M.2 SSDスロット x 3(うち、2つのスロットは変換アダプタで U.2 利用が可)
- 最大 96GB DDR5 メモリ
- 10GbE LAN port x 1、5GbE LAN port x 1
- PCIe x16 Slot x 1(PCIe 4.0 x4 接続・ロープロファイル)
- OCuLink x 1(PCIe 4.0 x4)
- USB4 x 2
いやはや、てんこ盛りですね。
N5 Pro の Ryzen AI 9 HX PRO 370 は、最新の Zen 5(Strix Point)世代、12コア / 24スレッドというメチャクチャにパワフルなハイエンド CPU。
一方、N5 無印の Ryzen 7 255 は、1世代前の Zen 4(Hawk Point)、8コア / 16スレッドのミドルレンジ CPU です。
- N5 Pro は ベアボーンの定価は $1,299(日本公式サイトでは 203,990円にクーポンで20% OFF)
- N5 無印はベアボーンの定価 $729(日本公式サイトでは 118,990円にクーポンで20% OFF)
N5 Pro の強力な Ryzen AI 9 HX PRO 370 は魅力ですがホームラボ利用には少々オーバースペックですし、ECC メモリもホームラボにはオーバースペック。
そして、なにより N5 無印の80% も高い価格設定を考えると、前世代とはいえ現行の CPU 搭載した N5 無印のコストパフォーマンスが光ります。
N5 Pro の Ryzen AI 9 HX PRO 370 と、N5 無印の Ryzen 7 255(= Ryzen 7 8745HS)のパフォーマンス比較は、以下のサイトが参考になります。
- AMD Ryzen AI 9 HX PRO 370 vs Ryzen 7 8745HS(PassMark Software)
- AMD Ryzen AI 9 HX 370 vs AMD Ryzen 7 8745HS(CPU-Monkey)
細かな仕様や魅力を書き出すと長くなりますので、公式サイトの情報やニュース記事などもご確認ください。
N5無印の CPU について
N5 無印の CPU は Ryzen 7 255。ちょっと聞きなれない型版の CPU を搭載しています。調べてみると、Ryzen 7 255 は Ryzen 7 8745HS のリブランド(名称変更)のようです。
では Ryzen 7 8745HS はどんな CPU なのかと言うと、Ryzen 7 8845HS から NPU を省いた(無効化)したモデルだそうです。
詳しく調べてみると NPU だけでなく微妙な(本当に微妙な)差がありました。
Ryzen 7 8845HS (Ryzen AI 7 260) |
Ryzen 7 8745HS (Ryzen AI 7 255) |
|
---|---|---|
Core / Threads |
8 / 16 |
8 / 16 |
Clockspeed |
3.3Ghz / Up to 5.1Ghz |
3.8 GHz / Up to 4.9 GHz |
Zen architecture |
Zen 4 (Hawk Point) |
Zen 4 (Hawk Point) |
GPU |
Radeon 780M (2.7 GHz) |
Radeon 780M (2.6 GHz) |
Ryzen AI (NPU) |
16 TOPS |
Disabled |
TDP |
45W |
45W |
Release |
2024Q1 |
2024Q4 |
あまりに微妙な違いなので、実際のところ「8745HS は 8845HS の NPU を無効化した廉価版」と表現して差し支えなさそうです。
NPU ダイが省かれているのではなく無効化されているそうなので、製造工程は同じと思われます。Ryzen 7 8845HS の B級品を 8745HS として製品化したものなのかもしれません。
旧世代 CPU のリブランド(名称変更)は、AMD の製品戦略によるものと思われます。
現在の最新世代は Zen 5(Strix Point)CPU で Ryzen AI 300 シリーズというブランド名になっています。
Ryzen AI ブランドの下位ラインナップとして、前世代の Zen 4(Hawk Point)CPU を Ryzen AI 200 シリーズとしてリブランドしたということのようです。
AI NAS って名乗っているのに NPU が無効化された CPU を搭載しているのはどうかな?と思わなくもないですが、強力な NPU が必要ならば PCIe スロットか、OCuLink で GPU を接続する選択肢があるのはいいですね。
ライバル製品の話
以前記事にした AOOSTAR の NAS mini PC は大変コスパよく稼働しているのですが、VM や Docker コンテナを動かすようになり、メモリと CPU パワーが不足してきていました。
半年くらい前から NAS PC の置き換えを考えていたので、MINISFORUM N5 シリーズ以外で候補に挙げていた製品についても触れておこうと思います。
AOOSTAR WTR PRO(AMD Ryzen 7 5825U)
以前の記事でお馴染みの AOOSTAR からもいい感じの NAS BOX、WTR PRO がリリースされています。
Ryzen 7 5825U を搭載した 4ベイ NAS でベアボーンで定価 $369。相変わらずのコスパの良さですね。
少し安価な(定価 $315) Intel N150 版もありますが、PCIe レーン数の問題からNVMe SSD のパフォーマンスをしっかり出せる Ryzen 7 5825U 版をおすすめします。
NAS として必要十分すぎるスペックなのですが、N5 無印と比べるとどうしても拡張性、インターフェースの豊富さでは見劣りしてしまいます。
AOOSTAR WTR PRO (AMD) | MINISFORUM N5 (無印) | |
---|---|---|
CPU(Release) |
Ryzen 7 5825U (2022Q1) |
Ryzen AI 7 255 = Ryzen 7 8745HS (2024Q1) |
Core / Threads | 8 / 16 | 8 / 16 |
Clockspeed | 2.0Ghz / Up to 4.5Ghz | 3.8GHz / Up to 4.9GHz |
Zen architecture | Zen 3 (Barcelo) | Zen 4 (Hawk Point) |
GPU | Radeon RX Vega 8 (2.0Ghz) | Radeon 780M (2.6GHz) |
Memory | Up to 32GB (DDR4) | Up to 96GB (DDR5) |
TDP | 25 W | 45W |
LAN | 2.5GbE x 2 port(RJ45) | 10GbE x 1 port(RJ45) 5GbE x 1 port(RJ45) |
USB | USB2.0 x 2 port (Type-A) USB3.2Gen? x 2 port (Type-A) USB3.2Gen2 x 1 port(USB-C) |
USB2.0 x 1 port (Type-A) USB3.2Gen2 x 2 port (Type-A) USB3.2Gen2 x 1 port (Type-A / 内部) |
USB4 | × | USB4 x 2 port (Type-C) |
OCuLink | × | 1 port (PCIe4.0 × 4) |
PCIe ×16 slot | × | 1 slot (PCIe 4.0 x 4 / Low Profile) |
SATA(HDD) | 2.5 / 3.5 inch x 4 slot | 2.5 / 3.5 inch x 5 slot |
M.2 NVMe | PCIe 3.0 x4 (4GB/s) x 2 slot | PCIe 4.0 x1 (2GB/s) × 2 slot PCIe 4.0 x2 (4GB/s) x 1 slot |
Price | $369 | $729 |
※ AOOSTAR WTR PRO の USB3.2 Type-A ポートの仕様を調べてみたのですが Gen1 なのか Gen2 なのかハッキリしませんでした。参考情報としてください
価格が2倍くらい違うので単純な比較はフェアではありませんが CPU、ストレージ、そして拡張性においても N5 無印の圧勝となりました。
正直、WTR PRO を買うか最後まで悩んでいたのですが、N5 無印を選んだ決め手は以下の2点。
- ホームラボのメインサーバーとしては長く稼働させたいので、将来に備えて拡張性があること
- VM や Docker コンテナも稼働させるのでなるべく新しい世代の CPU と多くのメモリ
WTR PRO は価格を考慮すると素晴らしいコストパフォーマンスなので、ものすごく魅力的な選択肢でした。
スペック以外にもアルミニウム筐体、側面に設定された各種ポート、電源ボタンのカバーなど、魅力的なポイントも多く N5 シリーズがなければ WTR PRO を買っていたと思います。
AOOSTAR WTR MAX(AMD Ryzen 7 PRO 8845HS)
タイミングよく AOOSTAR は WTR PRO のさらに上位版、WTR MAX を販売開始しました。価格はベアボーンで $699。N5 無印よりちょっと安いですね。

AOOSTAR WTR MAX AMD R7 PRO 8845HS 11ベイミニPC(先行販売、7月20日出荷)
$699(2025年7月時点)
CPU は Ryzen 7 PRO 8845HS を搭載し、なんと SATA を 6台、M.2 NVMe は 5台も搭載できてしまう N5 シリーズとはまた違った方向のてんこ盛り仕様。当然その分大型のファームファクタになっています。
Ryzen 7 PRO 8845HS。おや、どこかで見かけた名前ですね。
そうです。N5 無印の Ryzen 7 8745HS(Ryzen AI 7 255)の上位モデル、NPUが省かれていないやつです。リブランド後の名前は Ryzen AI 7 260 です。
WTR MAX は N5 シリーズに負けず USB4 も、OCuLink(PCIe4.0 x 4)もあります。しかし、PCIe スロットがありません。
うちのホームラボにはこのファームファクタは大きすぎるし、6台の HDD、M.2 NVMe 5台はいささかオーバースペックでした。サイズが大きいのに PCIe スロットがないのもマイナスポイントで、N5 無印に軍配が上がりました。
ともかくストレージをたくさん!という用途には相当に魅力的な選択肢だと思います。
WTRA MAX にはステータス表示ができる液晶パネルが付いていたりと、Geek 心をくすぐる仕様なんですけどね...。ほんと、こういうところ AOOSTAR は上手ですね。
UGREEN NASync DXP4800 Plus(Intel Pentium Gold 8505)
最近クラウドファンディグの成功や、各種メディアの記事で話題の UGREEN の NAS も検討対象でした。
NASync DXP4800 Plus は SATA HDD を4台、M.2 NVMe(PCIe4 x 4)を2台搭載でき、Intel Pentium Gold 8505 を搭載したビジネス向けの NAS です。
Intel Pentium Gold 8505 は5コア、6スレッドの hybrid (big.LITTLE) アーキテクチャ。発売は 2022Q1 で旧世代(Coeffee Lake-R)の CPU になります。
今回の比較対象の中では、残念ながら圧倒的に非力な部類に入ります。
NAS として非力なわけではないのですが、WTR Pro や N5 無印に比べるとコストパフォーマンス面でイマイチ感が…。
また、UGREEN の NAS は自社の NAS OS 以外をサポートしていないので残念ながら今回は選択肢に上がりませんでした。
そもそも製品カテゴリがビジネス向けなので、サポートや安心感を考えると定価 99,880円は決して高額ではないと思います。
自己責任でいいから、安くて強力なマシンで自分の好きに運用したい層からすると非機能要件(日本語サポートや安心感)がオーバースペックといったところでしょうか。
MINISFORUM N5 / N5 Pro のまとめ
ずっと検討していた NAS BOX のリプレースが N5 無印のおかげで理想的な構成で実現しそうです。
パワフルな CPU、交換可能な 5つの 3.5 HDD ベイ、3つの M.2 NVMe スロット、小型のフォームファクタ。そして OCuLink に PCIe スロット。自分のニーズにピッタリな製品に出会えて嬉しい限りです。
特に PCIe スロットがあるのは大きな魅力。
10GbE カードを追加したり、NVMe 増やしたり、TVチューナーを入れたりするのも良いかもしれません。ローカル LLM が必要になれば、OCuLink で GPU 追加もいいですね。
出荷は8月末とのことなので、到着次第レビューなどもできればと思ってます。
お金に余裕があったら、Ryzen AI 9 HX Pro 370 搭載の N5 Pro を買いたかったですけどね…。
MINISFORUM の公式 Discord フォーラムに早割 30% OFF クーポンと $30(4,500円)割引のクーポンがあります。これは N5 無印にも使えるので、2つのクーポンを合わせると 8万円以下になりました。
30% OFF クーポンは7月7日ごろまでの期間限定(valid for 7 days only)とのことなので、興味のある方は、公式 Discord フォーラムをチェックしてみてください。