MINISFORUM N5 をオーダーしたので他の NAS と比較

MINISFORUM N5 をオーダーしたので他の NAS と比較

少し前から話題になっていた MINISFORUM の NAS、N5 Pro AI NASN5 NAS がついに発売になりました。さんざんっぱら熟考して、N5 NAS(以下、N5 無印)をオーダーしました。

以前記事にした AOOSTAR の NAS mini PC の置き換えとなる予定で、TrueNAS Scale で運用するつもりです。私のオーダーの出荷は8月末だそうで、だいぶ先ですけど楽しみです。

少し前なら考えられないくらい、NAS(…というよりも HDD を複数搭載できるミニ PC)の選択肢が増えています。購入を決めた理由と、他に候補にしていた製品についてまとめておきます。

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になっています。Amazon プライムデーに合わせたセールは7月14日までです。

MINISFORUM N5 Pro と N5 無印の違い

N5 Pro は CPU に AMD Ryzen AI 9 HX PRO 370 を搭載し、N5 無印AMD Ryzen 7 255(簡体字サイト)を搭載。

事前情報では N5 無印の詳細はあまり確認できず、拡張性や LAN 周りが制限されるだろうと思っていたのですが、発表されてみれば異なるのは CPU と ECC メモリへの対応だけでした。

両モデル共通の特徴をざっとあげると以下の通り。

  • 3.5 / 2.5 インチ HDDベイ x 5
  • M.2 SSDスロット x 3(うち、2つのスロットは変換アダプタで U.2 利用が可)
  • 最大 96GB DDR5 メモリ(CPU スペック的にはもっといけそう?)
  • 10GbE LAN ポート x 1、5GbE LAN ポート x 1
  • PCIe x16 スロット x 1(PCIe 4.0 x4 接続・ロープロファイル)
  • OCuLink ポート x 1(PCIe 4.0 x4)
  • USB4 ポート x 2
  • USB2.0 ポート x 1、USB3.2 ポート x 3(1つは内部ポート)

いやはや、てんこ盛りですね。

N5 Pro の Ryzen AI 9 HX PRO 370 は、最新の Zen 5(Strix Point)世代、big.LITTLE 構成の 12コア / 24スレッドというめちゃくちゃパワフルなハイエンド CPU。ECC メモリもサポートします。PCIe レーン数は 16本。

一方、N5 無印Ryzen 7 255 は、1世代前の Zen 4(Hawk Point)世代、8コア / 16スレッドの現行ミドルレンジ CPU です。ECC メモリはサポートしません。PCIe レーン数は 20本。

また N5 無印には Wi-Fi / Bluetoothモジュール用の M.2 Key E スロットが無いそうです。ただ製品サイトには記載がなく、実際のところは不明です

  • N5 Pro は ベアボーンの定価は $1,299
    • 日本公式サイトでは定価 203,990円(20% オフクーポン「NAS80」が利用可能)
  • N5 無印はベアボーンの定価 $729
    • 日本公式サイトでは定価 118,990円(20% オフクーポン「NAS80」が利用可能)

N5 Pro の強力な Ryzen AI 9 HX PRO 370 は魅力ですがホームラボ利用には少々オーバースペックですし、ECC メモリも同じくオーバースペックと言えます。

そして、N5 Pro80% 近く高い価格設定(定価ベースで N5 無印より $570 = 85,000円高い)を考えると、前世代とはいえ現行 CPU の乗った N5 無印のコストパフォーマンスが光ります。

MINISFORUM N5 無印の CPU について

N5 無印の CPU は Ryzen 7 255。ちょっと聞きなれない型版の CPU を搭載しています。調べてみると、Ryzen 7 8745HS のリブランド(名称変更)品のようです。

では Ryzen 7 8745HS はどんな CPU なのかと言うと、Ryzen 7 8845HS から NPU を省いた(無効化)したモデルだそうです。

 

Ryzen 7 8845HS (Ryzen AI 7 260)

Ryzen 7 8745HS (Ryzen AI 7 255)

Core / Threads

8 / 16

8 / 16

Clockspeed

3.3Ghz / Up to 5.1Ghz

3.8 GHz / Up to 4.9 GHz

Zen architecture

Zen 4 (Hawk Point)

Zen 4 (Hawk Point)

GPU

Radeon 780M (2.7 GHz)

Radeon 780M (2.6 GHz)

Ryzen AI (NPU)

16 TOPS

Not Available

TDP

45W

45W

Release

2024Q1

2024Q4

詳しく調べてみると NPU だけでなく微妙な(本当に微妙な)差があるようです。

あまりに微妙な違いなので、実際のところ「8745HS は 8845HS の NPU を無効化した廉価版」と表現して差し支えなさそうです。

NPU ダイが省かれているのではなく無効化されているそうなので、製造工程は同じと思われます。Ryzen 7 8845HS の B級品を 8745HS として製品化したものなのかもしれません。

旧世代 CPU のリブランド(名称変更)は、AMD の製品戦略によるものと思われます。

現在の最新世代は Zen 5(Strix Point)CPU で Ryzen AI 300 シリーズというブランド名になっています。
Ryzen AI ブランドの下位ラインナップとして、前世代の Zen 4(Hawk Point)CPU を Ryzen AI 200 シリーズとしてリブランドしたということのようです。

参考:“Hawk Point Refresh”―Ryzen 200 seriesの話題(北森瓦版)

強力な NPU が必要ならば、OCuLink で GPU を接続する選択肢があるのは N5 無印の良いところです。

OCuLink で GPU を接続すれば、N5 ProRyzen AI 9 HX PRO 370 よりもずっと強力な NPU を手に入れることができます。

ライバル製品の話

以前記事にした AOOSTAR の NAS mini PC は大変コスパよく稼働しているのですが、VM や Docker コンテナを動かすようになり、メモリと CPU パワーが不足してきていました。

半年くらい前からホームラボのサーバー置き換えを考えていたので、MINISFORUM N5 シリーズ以外で候補に挙げていた製品についても触れておこうと思います。

AOOSTAR WTR PRO

以前の記事でお馴染みの AOOSTAR からもいい感じの NAS BOX、WTR PRO がリリースされています。

Ryzen 7 5825U を搭載した 4ベイ NAS でベアボーンで定価 $369。相変わらずのコスパの良さですね。

少し安価な(定価 $315) Intel N150 版もありますが、PCIe レーン数の問題からNVMe SSD のパフォーマンスをしっかり出せる Ryzen 7 5825U 版をおすすめします。

NAS として必要十分すぎるスペックなのですが、N5 無印と比べるとどうしても拡張性、インターフェースの豊富さでは見劣りしてしまいます。

  AOOSTAR WTR PRO (AMD) MINISFORUM N5 (無印)
CPU(Release)

Ryzen 7 5825U (2022Q1)
= Ryzen AI 7 260

Ryzen AI 7 255
= Ryzen 7 8745HS (2024Q1)
Core / Threads 8 / 16 8 / 16
Clockspeed 2.0Ghz / Up to 4.5Ghz 3.8GHz / Up to 4.9GHz
Zen architecture Zen 3 (Barcelo) Zen 4 (Hawk Point)
GPU Radeon RX Vega 8 (2.0Ghz) Radeon 780M (2.6GHz)
Memory Up to 32GB (DDR4) Up to 96GB (DDR5)
TDP 25 W 45W
LAN 2.5GbE x 2 port(RJ45) 10GbE x 1 port(RJ45)
5GbE x 1 port(RJ45)
USB USB2.0 x 2 port (Type-A)
USB3.2Gen? x 2 port (Type-A)
USB3.2Gen2 x 1 port(USB-C)
USB2.0 x 1 port (Type-A)
USB3.2Gen2 x 2 port (Type-A)
USB3.2Gen2 x 1 port (Type-A / 内部)
USB4 × USB4 x 2 port (Type-C)
OCuLink × 1 port (PCIe4.0 × 4)
PCIe ×16 slot  × 1 slot (PCIe 4.0 x 4 / Low Profile)
SATA(HDD) 2.5 / 3.5 inch x 4 slot 2.5 / 3.5 inch x 5 slot
M.2 NVMe  PCIe 3.0 x4 (4GB/s)  x 2 slot PCIe 4.0 x1 (2GB/s) × 2 slot
PCIe 4.0 x2 (4GB/s) x 1 slot
Price $369 $729

※ AOOSTAR WTR PRO の USB3.2 Type-A ポートの仕様を調べてみたのですが Gen1 なのか Gen2 なのかハッキリしませんでした。参考情報としてください

価格が2倍くらい違うので単純な比較はフェアではありませんが CPU、ストレージ、そして拡張性においても N5 無印の圧勝となりました。

正直、WTR PRO を買うか最後まで悩んでいたのですが、N5 無印を選んだ決め手は以下の2点。

  • ホームラボのメインサーバーとして長く稼働させたいので、将来に備えた拡張性
  • VM や Docker コンテナも稼働させるので新しい世代の CPU と大容量メモリのサポート

WTR PRO は価格を考慮すると素晴らしいコストパフォーマンスなので、ものすごく魅力的な選択肢でした。

スペック以外にもアルミニウム筐体、側面に設定された各種ポート、電源ボタンのカバーなど、魅力的なポイントも多く N5 シリーズがなければ WTR PRO を買っていたと思います。

AOOSTAR WTR MAX

AOOSTAR は WTR PRO のさらに上位版、WTR MAX もリリースしています。価格はベアボーンで $699N5 無印よりちょっと安いですね。

CPU は Ryzen 7 PRO 8845HS を搭載し、なんと SATA を 6台M.2 NVMe は 5台も搭載できてしまう N5 シリーズとはまた違った方向のてんこ盛り仕様。当然その分大型のファームファクタになっています

Ryzen 7 PRO 8845HS。おや、どこかで見かけた名前ですね。

そうです。N5 無印の Ryzen 7 8745HS(Ryzen AI 7 255)の上位モデル、NPUが省かれていないやつです。リブランド後の名前は Ryzen AI 7 260 です。

WTR MAXN5 シリーズに負けず USB4 も、OCuLink(PCIe4.0 x 4)もあります。しかし、PCIe スロットはありません

6台の HDD 5台の M.2 NVMe とういうストレージ重視の設計は魅力的ですが、うちのホームラボにはオーバースペックで、N5 無印に軍配が上がりました。PCIe スロットがなかったのも理由のひとつですが、一番の理由はファームファクタが大きすぎたこと。

ともかくストレージをたくさん!という用途にはすごく魅力的な選択肢だと思います。

WTRA MAX にはステータス表示ができる液晶パネルが付いていたりと、Geek 心をくすぐる仕様なんですよね...。ほんと、こういうところ AOOSTAR は上手ですね。

UGREEN NASync DXP4800 Plus

最近クラウドファンディグの成功や、各種メディアの記事で話題UGREEN の NAS も検討対象でした。

NASync DXP4800 Plus は SATA HDD を4台、M.2 NVMe(PCIe4 x 4)を2台搭載でき、Intel Pentium Gold 8505 を搭載したビジネス向けの NAS です。

Intel Pentium Gold 8505 は 5コア、6スレッドの hybrid(big.LITTLE)アーキテクチャ。発売は 2022Q1 で旧世代(Coeffee Lake-R)の CPU になります。

今回の比較対象の中では、残念ながら圧倒的に非力な部類に入ります。

NAS として非力なわけではないのですが、WTR ProN5 無印に比べるとコストパフォーマンス面でイマイチ感が…。

また、UGREEN の NAS は自社の NAS OS 以外をサポートしていないので選択肢にはなりませんでした。

そもそも製品カテゴリがビジネス向けなので、サポートや安心(どの程度あるのか知らないけど)を考えると定価 99,880円は決して高額ではないと思います。

自己責任でいいから、安くて強力なマシンで自分の好きに運用したい層からすると非機能要件(日本語サポートや安心感)がオーバースペックといったところでしょうか

MINISFORUM N5 シリーズのまとめ

ずっと検討していた NAS BOX のリプレースが N5 無印のおかげで理想的な構成で実現しそうです。

パワフルな CPU、交換可能な 5つの 3.5 HDD ベイ、3つの M.2 NVMe スロット、小型のフォームファクタ。そして OCuLink に PCIe スロット。

私のニッチなニーズにピッタリな製品に出会えて嬉しい限りです。特に PCIe スロットがあるのは大きな魅力。

10GbE カードを追加したり、NVMe 増やしたり、TVチューナーを入れたりするのも良いかもしれません。ローカル LLM が必要になれば、OCuLink で GPU 追加もいいですね。

私のオーダーの出荷は8月末とのことなので、到着次第レビューなどもできればと思ってます。

お金に余裕があったら、Ryzen AI 9 HX Pro 370 搭載の N5 Pro を買いたかったですけどね…。

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