MINISFORUM N5 無印ハードウエア・レビュー

思ったより早く Minisforum N5 が届きました。8月4日に Minisforum から出荷通知が来て、到着したのは 8月7日。
前回、前々回は実機が手元にない状態の記事でしたが、今回からは N5 の実機で付属品や内部構造に加えて M.2 スロット、3.5インチ HDD ベイ、10GbE / 5GbE、PCIe スロットや USB 周りなどの構成を見ていきます。
特にコンポーネントが十分な PCIe レーンで接続されているかどうか。そしてストレージ周りは可能な範囲でベンチマークも取って確認していきます。
目次
パッケージと筐体
真っ黒なパッケージの箱が、ぴったりサイズのダンボールに入った状態で届きました。正面とそのうら側には本体写真が、右面には簡単に特徴が記載されています。


付属品
同梱物はマニュアル、ACアダプターと電源ケーブル、フロントパネル、M.2 to U.2 変換ボードと給電ケーブル、2.5 インチ HDD/SSD ドライブ用のネジ2袋、HDMI ケーブル、Ethernet ケーブルが入ってました。
電源ケーブルは 2ピンで日本向け仕様になっていました。マニュアルも簡易的な日本語の記載があります。


本体
真っ黒な筐体に 3.5 インチ HDD ベイが 5つ。正面下段(グレーの部分)が引き出せるようになっていて、マザーボードに簡単にアクセス可能です。
裏面には 92mm の排気ファンが2つありここから排気します。ファンガードのスリットが斜めでオシャレ。


底面にある2つのネジを外すとフロント面の下段からマザーボードを引き出すことができます。
エアフローはフロントから吸気して後ろに排気。底面にもエアホールがありました。

内部に簡単にアクセスできるがはとても良いですね。AOOSTAR の R3 はマザーボードにアクセスするの大変だったなぁ。
全体的につくりはしっかりしていて、ビルドクオリティは高いです。ただ、HDD ベイのロック機構や抜き差しの細かい部分はいまひとつ。


マザーボードのおもて面の左下のファンの下に M.2 スロットが3つ。マザーボードうら面には PCIe スロットと右下にメモリスロットが見えます。M.2 スロットとメモリスロットにアクセスするにはファンを取り外す必要があります。


CPU
N5 無印の CPU は Ryzen 7 255。8コア、16スレッドの Zen 4(Hawk Point)世代の CPU(APU) で Ryzen AI(NPU)はありません。GPU は Radeon 780M。
CPU については前回さんざん書いたので、ここでは細かい話は割愛します。
メモリ
マザーボードうら面にメモリスロットが2つあり、DDR5-5600(PC5-44800)の SODIMM に対応します。
N5 Pro は ECC メモリに対応しますが、N5 無印は ECC メモリには非対応です。
Minisforum の公称では 48GB x 2枚の 96GB が最大ですが、CPU 的には 256GB まで対応しています。
128GB(64GB x 2枚)を認識したという話を海外のフォーラムで見かけたので Crucial の DDR5 64GB SODIMM を1枚買ってきました。問題ないだろうと思ってはいましたが、ちゃんと認識されて安心してます。
1枚ではデュアルチャネルを活かせませんが 32GB 2枚より安いし、将来的には同じものを買い足せば無駄なく 128GB に出来るのが嬉しいところ。
M.2 スロット
3つの M.2 スロットがあり、PCIe 4.0 x1 が2つ、PCIe 4.0 x2 が1つです。一般的な Type 2280 だけでなく Type 22110 にも対応します。
Type 22110 なんて一般には流通してないですけど、こういうところ対応してくるのは面白いですね。
マザーボードに並ぶ 3つの M.2 スロットの上と下が PCIe 4.0 x1 で、真ん中が PCIe 4.0 x2 になります。
レーン数 | 実効速度(理論値) | 補足 | |
---|---|---|---|
スロット1 | PCIe 4.0 x1 | 1.97GB/s | Miniscloud OS 用 128GB NVMe SSD |
スロット2 | PCIe 4.0 x2 | 3.94GB/s |
M.2 空きスロット |
スロット3 | PCIe 4.0 x1 | 1.97GB/s | M.2 空きスロット |
出荷時状態では スロット1 に Miniscloud OS がインストールされた AirDisk という M.2 2280 NVMe SSD が搭載されていました。PCIe 3.0 の 128GB です。
PCIe 3.0 だとせっかくの PCIe 4.0 が活かせないし、Miniscloud OS を使う予定もないので取り外して KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 に交換してます。
このあと色々ベンチマーク結果を紹介しますが、特に断りがない場合には NVMe SSD はすべて KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 です。ベンチマークは一発取りなので、あくまで参考値としてください。
M.2 スロット1(PCIe 4.0 x1)
写真で最下段の M.2 スロット(便宜上スロット1と呼びます)は PCIe 4.0 x1 が割り当てられていて Ryzen 7 H255 の PCIe レーン 20本のうち 1本が割り当てられています。


PCIe 4.0 x1(理論値 1.97GB/s) なのでリード 1.76GB/s は想定通りというか大健闘です。
TrueNAS(Debian ベース)で起動して hdparm でも測定してみます。
$ sudo hdparm -t /dev/nvme0n1
/dev/nvme0n1:
Timing buffered disk reads: 5014 MB in 3.00 seconds = 1670.78 MB/sec
CrystalDiskMark の SEQ1MQ8T1 相当の速度が計れますが、概ね近い数字が出ていますね。
M.2 スロット2(PCIe 4.0 x2)
写真で真ん中の M.2 スロット(便宜上スロット2と呼びます)は PCIe 4.0 x2 が割り当てられていて Ryzen 7 H255 の PCIe レーン 20本のうち 2本が割り当てられています。


PCIe 4.0 x2(理論値 3.94GB/s) に近いリード 3.50GB/s 出ています。いいんじゃないでしょうか。
TrueNAS(Debian ベース)で起動して hdparm でも測定してみます。
$ sudo hdparm -t /dev/nvme0n1
/dev/nvme0n1:
Timing buffered disk reads: 9758 MB in 3.00 seconds = 3252.54 MB/sec
CrystalDiskMark の SEQ1MQ8T1 相当の速度が計れますが、概ね近い数字が出ています。
M.2 スロット3(PCIe 4.0 x1)
写真で一番上の M.2 スロット(便宜上スロット3と呼びます)は PCIe 4.0 x1 が割り当てられていて Ryzen 7 H255 の PCIe レーン 20本のうち 1本が割り当てられています。
仕様はスロット1 と同じですが、一応見てみます。


PCIe 4.0 x1(理論値 1.97GB/s) に近いリード 1.76GB/s が出せています。同じ PCIe 4.0 x1 であるスロット1 の結果ともほぼ一致します。
スロット3 でも TrueNAS(Debian ベース)で起動して hdparm による測定もしておきましょう。
$ sudo hdparm -t /dev/nvme0n1
/dev/nvme0n1:
Timing buffered disk reads: 5012 MB in 3.00 seconds = 1670.66 MB/sec
こちらもスロット1 の結果とほとんど一緒。いい感じです。
SATA ベイ
マザーボードの奥に PCIe x2 が生えており、エンクロージャーの SATA に接続されます。エンクロージャー側にコントローラーがあり JMiron JMB585 でした。
JMB585 は PCIe 3.0 x2 接続のブリッジコントローラで5台の SATA 6Gb/s をサポートします。
なんとホットスワップも可能なことを確認しました。地味にこれは嬉しい。


PCIe 4.0 x2 バスに接続されていて Ryzen 7 H255 の PCIe レーン 20本のうち 2本が割り当てられています。
PCIe 4.0 x2 に接続されていますが、JMB585 が PCIe 3.0 のチップなので PCIe 3.0 x2(理論値 1.97GB/s)です。
これを 5つの SATA ポートが共有する形になるので SATA 6Gb/s(理論値 600MB/s)x 5台だとスペック上は帯域が不足しそうですが、SATA HDD は実質 300MB/s 以下なので問題にならないと思われます。
ただ、550MB/s くらい速度が出せる SATA SSD x 5台みたいな構成は帯域が不足すると思われますが、高速なネットワーク向けのストレージを組みたいなら M.2 が 3スロットあるのでそっちでやるのがいいでしょう。
PCIe 4.0 x1 接続の M.2 スロット1 と 3 ですら 1,700MB/s 出せます。
HDD / SSD
3.5 インチ HDD はツールレスでマウント可能で、両サイドにあるプラスチック製のパネルで固定します。
サイドパネルには「PULL」って書いてありますがひっぱって外すと折れてしまいそうなので、内側からピンを押し出す感じで外すと良いです。
2.5インチ HDD / SSD の場合は底面でねじ止めが必要。3.5インチ用のピンが干渉するので、サイドパネルを外してマウントします。


SATA SSD ベンチマークは SUNEast SE900 / 128GB を使用。ちなみにテスト確認用の Windows 11 も別の SATA SSD にインストールして起動しています。
SATA 3.5インチ HDD は HGST ALA632 / 2TB を使用。手持ちで余っているものがこれしかなかったのですが 15年くらい前の HDD です。


SUNEast SE900 は SATA 6Gb/s(理論値 600MB/s)に近い数字が出せているし、HGST HDS5C3020 ALA632 もほぼカタログスペック通りの速度が出せていると言えます。
PCIe スロット
マザーボードうら面には、N5 シリーズの特徴であるハーフハイト(ロープロファイル)の PCIe スロットがあります。
PCIe スロットの物理的な形は PCIe x16 ですが、内部に接続されている レーン数は4本なので接続は PCIe x4 となります。
PCIe 世代 | PCI-Express 4.0(Gen4) |
---|---|
PCIe レーン数 | PCIe x4 |
PCIe ソケット形状 | PCIe x16 |
搭載可能なカードの厚さ | シングルスロット |
搭載可能なカードの高さ | ロープロファイル |
搭載可能なカードの長さ | ハーフレングス(多少余裕あり) |
PCIe スロットの使いドコロは現在考え中ですが、とりあえず M.2 NVMe SSD 変換 PCIeカード(GLOTRENDS PA09-HS)を買ってきて KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 のベンチマーク走らせてみることにします。
まず、HWiNFO で見ると Ryzen 7 H250 の General Purpose Port(GPP)Bridge で PCIe x4 Bus 接続されているのを確認できます。Ryzen 7 H255 の PCIe 20レーンのうち 4レーンがちゃんと割り当てられています。


検証に使った KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 はリード最大 5,000MB/s なので 5,000MB/s あたりで頭打ちになっています。
もっと高速な NVMe SSD(WD_BLACK SN7100 とか Samsung 990 PRO)なら PCIe 4.0 x4(理論値 7.88GB/s)を活かしてリード 7,000MB/s オーバーも出せると思われます。
TrueNAS(Debian ベース)で起動して hdparm でも測定してみます。
$ sudo hdparm -t /dev/nvme0n1
/dev/nvme0n1:
Timing buffered disk reads: 14126 MB in 3.00 seconds = 4708.54 MB/sec
いいですね。
PCIe スロットを何に使うかは悩みどころですが、N5 シリーズで高速ストレージが必要な場合は PCIe スロットに NVMe SSD という事になりそうです。
ネットワーク
本体背面には RJ45 の LAN ポートが2つ。LAN 1 が Marvell AQC113 の 10GbE、LAN 2 が Realtek RTL8126 の 5GbE です。



HWiNFO で見ると Ryzen 7 H250 の General Purpose Port(GPP)Bridge でそれぞれ PCIe x1 Bus 接続されているのが確認できます。Ryzen 7 H255 の PCIe 20レーンのうち 1レーンずつ割り当てられています。
LAN 1ポート(10GbE/RJ45)
バックパネルに LAN 1ポートと刻印があるのが 10GbE になり Marvell AQC113 で実装されています。
Marvell AQC113 はマザーボードおもて面、M.2 スロットの後ろにあり、 逆L字型のヒートシンクで覆われています。ファンで NVMe SSD と一緒に空冷するようになっている模様。
AQC113 は前世代の AQC107 と比べて消費電力も下がり、発熱もだいぶ抑えられているようですが 10GbE チップはまだそれなりに発熱するのでヒートシンクあるのはありがたいですね。
10GbE のネットワーク環境がないので、ネットワークベンチマークはやっていません。
LAN 2ポート(5GbE/RJ45)
バックパネルに LAN 2ポートと刻印があるのが 5GbE になり Realtek RTL8126 で実装されています。
Realtek RTL8126(通称カニ)がマザーボードおもて面 M.2 スロット1 と M.2 スロットの間あたりにあります。RTL8126 は公式のデータシートなど見つけられてないのでよくわかんないのですが、定番チップのようです。
5GbE のネットワーク環境もないので、ネットワークベンチマークはやっていません。
余談ですが、RTL8159 という 10GbE チップがリリースされたそうで、安く・低電力・低発熱だそうです。PC だけでなくスイッチにも RTL8159 が普及してくると 10GbE 機器の価格がぐっと下がってくるんじゃないかと期待してます。
USB4(40Gbps)ポート
USB4 ポートはフロントとバックパネルに1つずつあり、それぞれ USB4 デュアルレーン(40GBps)をサポートします。
HWiNFO によると CPU の AMD Phenix コントローラーで実現されているため PCIe 4.0 x16 Bus 接続で2つのポート(ルーター)が接続されているようです。また、USB 3.x 系のデバイス接続時は USB 3.2 Gen2 ポートとして動作します。
以前レビューした SATECHI USB4 NVMe SSD Pro Enclosur に KIOXIA の EXCERIA PLUS G3 を入れて接続してみました。


Windows 11 の [ 設定] > [ Bluetooth とデバイス] > [ USB ] > [ USB4 ハブとデバイス] からも USB4 の接続状態を確認できます。

せっかくなのでベンチマークを取ってみます。


リード 3.7GB/s と SATECHI USB4 NVMe SSD Pro Enclosur の速度がしっかり出せています。40Gbps(理論値 5GB/s) なので、ケースを変えたり条件を整えればもう少し伸びしろがあるのかもしれませんが、N5 の USB4 はフルスペックのネイティブ USB4 と言えます。
NVMe SSD を接続するとオンボード PCIe 4.0 x2 相当の速度(3.7GB/s)の速度を叩き出すと思って良さそうです。
USB 3.2 Gen2 / USB 2.0 ポート
USB 3.2 Gen2(10Gbps) の Type-A ポートがフロントとバックパネル、そしてマザーボード上に1つずつ、バックパネルには USB 2.0 の Type-A ポートが1つあります。
HWiNFO によると CPU の AMD Raphael コントローラーに接続されていました。
N5 無印の公式スペックシートは表記揺れがひどくいまいち仕様がはっきりしていませんでしたが、全ポートが AMD Rapahel コントローラーで提供されることがわかり仕様が確定しました。
USB 3.x の表記はもう USB Promoter Group が USB 3.x 系の命名規則で混乱を招いたのが悪い。
OCuLink コネクタ
みんな大好き OCuLink ですが、OCuLink ドックも OCuLink ケーブルもなんにも持ってないので未テストです。
OCuLink ポート | 1ポート |
---|---|
PCIe 世代 | PCI-Express 4.0(Gen4) |
PCIe レーン数 | PCIe x4 |
USB4 の PCIe トンネリングと異なり、OCuLink は PCIe 4.0 x4 をそのまんまケーブルで延長したようなものと理解していますので、相性はあれど PCIe x4 そのものだと思ってます。
誰かがいらない OCuLink 機材をくれたり、レビュー用に貸し出してくれるようなことがあればテストしてみたいものです。
USB 3.2トンネリングモード時に USB 3.2 Gen2x2 に対応するかどうかは、対応デバイスを持っていないので未確認です。